《尼崎青年会議所2021年度入会 池田りな 職種:市政関係・外国人向け日本食料理教室講師》
私は、大学生の頃から、外国人向けの日本食料理教室を主催しています。
初めて日本食を教えたのは、ベジタリアンのインド人留学生でした。
きっかけは、数日後にインドに帰国する彼女が、「4年間も日本に住んでいたのに、日本食を1度も食べたことがないの。」と言ったことでした。
その日は、ベジタリアンの彼女のため、一緒に野菜だけで作る巻き寿司と昆布、しいたけから出汁をとるお味噌汁を作りました。彼女は、日本語が読めないため、日本食に何が入っているか分からず、日本でもインド料理のみを食べていたのだそうです。その時に、日本が英語対応やフードダイバーシティ対応に遅れていることで、食事に困っている外国人が彼女以外にもたくさん居ることを知りました。
例えば、イスラム教の方は豚肉やアルコールを摂取できません。アルコールには、和食に欠かせないみりんや味噌(酒精が含まれている場合)等の調味料も含まれます。彼女のように菜食の方は、魚ベースの出汁も食べることができないため、和食を日常的に食べるのは難しいのです。さらに、言語の問題もあります。日本語能力に乏しい外国人にとって、飲食店に行っても、そのメニューに何が入っているのかを聞くのが難しいのです。そういったことから、日本に留学や旅行に来ても、結局母国の料理のみを食べて生活している外国人が少なくありません。
しかし、その国の「食」を楽しむことは、旅行や留学の醍醐味の1つだと思います。私は、せっかく日本にいるのに日本食を食べることができない外国人に、安心して日本食を楽しんで欲しい、そんな想いで友人と外国人向けの日本食料理教室を開講しました。
教室を通して、イスラエルの政治家やアメリカのプロ野球選手のご夫妻、メキシコのシェフ、普段、出会うことのない人たちとの出会いがありました。2~3時間という短い時間ではありますが、“一緒に料理をして、食べる”という濃密な時間をともにすることで心の距離は縮まり、未だ続いているご縁もたくさんあります。
私が想像していた以上に外国人向け日本食料理教室の需要は高く、多い日は1日3レッスン、午前中・お昼・午後と開催することもありました。
そのため、一念発起して、社団法人を立ち上げました。
これにより、キャラクターの版権を取り、人気の「キャラ弁」を教えたり、自治体からお仕事を依頼されるなど、活動の幅や内容を広げることができました。
日本においては、まだまだ馴染みのないヴィーガンやベジタリアンも、世界を見ると菜食者の人口は年々増加傾向にあります。コロナ禍における健康志向の高まりやSDGs等の観点からも、食の果たす責任への意識が高まっていることが増加の要因になっています。これから少しずつ増加すると考えられる外国人観光客への対応を考えると、日本のフードダイバーシティの課題は一刻も早く解消していくべきだと思います。
また、菜食は、菜食主義者だけではなく、普段、お魚やお肉を食べる人にも楽しんでいただけるお食事です。
元ビートルズのポール・マッカートニー氏は、「ミートフリーマンデー」という活動を提唱しています。この活動は、「週に1回、月曜日だけお肉を食べない日を作ろう」というもので、動物愛護や環境保護、健康維持などを目的にしています。
最後に、私が外国人向け日本食料理教室を開講し、今日まで続けてきた理由をお話させてください。
私は大学を卒業後、IT関連の会社に就職し、その後、子どもを出産して転職、現在は尼崎市議会議員として活動しています。ライフステージが変わり、フルタイムの仕事と子育てを両立しながらも、外国人向け料理教室を継続してきたのには“理由”があります。
それは、外国人に和食を通して日本の良さを伝えることが好きだからです。何十回、何百回と開催してきましたが、料理教室は本当に楽しく、かけがえのない時間です。報酬はいただかず、運営に携わっていますが、お金以上の価値を感じています。私にとって、本当に「好きなこと」で「生きがい」の1つです。
私は母がハワイに住んでいたこともあり、小さい頃から、海外を身近に感じて育ちました。日本では味わえない経験ができる海外旅行や新たな発見に繋がる外国人との交流が大好きです。また、その中で改めて日本の良さに気付き、日本に対する想いも強くなりました。
学生時代は毎週のように、外国人観光客を無料で案内していました。ゲストに合わせて観光ルートも変えるなど、ツアーガイドのような趣味を持っていたため、お気に入りでよく紹介していたお好み焼き屋さんには、旅行会社の人だと勘違いされたこともありました。
皆さんにも「やってみたい」と思う気持ちや自分の「好き」をもっと大切にしていただきたいと思っています。自分の置かれている環境や仕事、年齢、色々あると思いますが、「好き」という気持ちに勝るものはありません。その気持ちは、お客さまを含め、周囲の人に必ず伝わり、サポートしてくれる人も出てくると思います。
現在の目標は、尼崎市議会議員として、尼崎市をもっと海外からの観光客に喜んでもらえる街にしていくことです。尼崎市には、日本で最も新しいお城「尼崎城」があります。また、『忍たま乱太郎』、『落第忍者乱太郎』の作者、尼子騒兵衛氏の出身地でもあります。尼崎城と親和性の高い“忍者”を取り入れた街づくりをすることで、住民のみならず、外国人観光客にとっても魅力的な場所になると考えています。