自分の人生を振り返っている時に、巡り会った職業
藤井・岡
本日は、宜しくお願い致します!
西様
宜しくお願い致します。
藤井
西さんの自己紹介をお願い致します。
西様
私は看護師になりたくて、高校卒業後、看護学校に通っておりました。ただ、看護学校を中退することになり、看護師の道は断念しました。 その際に自分の人生を振り返り、自分は何がしたいのだろうと考えた時、現在の上司に声をかけられました。 実は私が高校生時代の教師と教え子という関係でもあり、ご連絡をさせて頂いてました。 そんな中で彼が営まれている事業や夢に興味を抱き、一度見学をさせていただいて、ぜひここで働きたいなという思いに至りました。 今まで、不登校生とかには触れたことがなかったのですが、彼らと出会ったときに、 私がやりたかったことはこれだなという考えになり、ここに入職させて頂きました。
目の当たりにしたのは、明るくて楽しそうに過ごしている姿
藤井
ここで働きたい、という思いに至ったエピソードをお聞かせ頂けないでしょうか?
西様
最初、不登校生に抱いていた漠然としたイメージというのは、やっぱりネガティブなもので、 暗くて塞ぎ込みがちで、ずっと室内に閉じこもっているイメージでした。 しかし、ここで目の当たりにしたのは、彼らが明るくて楽しそうに過ごしている姿でした。 なぜ、この子どもたちが不登校になったのか、そしてこの場所は不登校になった子どもたちが明るくなれる場所なのかなと興味を持ちました。 私自身も塞ぎ込んだり落ち込んだりという時期もありましたし、自分の経験等も活かせるのかなという思いに至りました。 それが、ここで働くことに繋がった理由です。
藤井
西さんのご出身は尼崎なのでしょうか?
西様
出身は大阪府豊中市になります。
だから、尼崎は縁もゆかりも無かったのです(笑)
尼崎で働くなかで、尼崎市民の皆様の暖かさに触れ「この街は本当にいい街だな」と思っています。 だから、今はこの街でずっと働きたいなと考えていますね。
社会にもう一度羽ばたけるような人材へと成長できる、成長していけるような場所
岡
フリースクールについてご紹介をお願いします。
西様
フリースクールは、1つめは学校に行けてない子どもたちにとっての居場所。 小中学生に関しては、フリースクールに来ていただければ、学校と同じように出席のカウントができます。 2つめは自律と自立の2つの理念を掲げての活動を行っています。 社会にもう一度羽ばたけるような人材へと成長できる、そこに行きつくような、 成長していけるような場所として存在意義を持っており、日々の活動を展開しております。
藤井
現在は、何名の生徒が通われているのでしょうか?
西様 現在は、20名~30名の生徒が通っています。
下は小学校3年生から、上は19歳の浪人生までとなります。
藤井
19歳の方までいらっしゃるのですね!
西様
現在は、大学受験を目指して頑張っています。 伴って、大学進学後のキャリアを考える指導も行っています。
藤井
具体的には、どんな指導方法(授業)をされているのでしょうか?
西様
小学生から中学生まで、一緒に授業を受ける形となります。 いわゆる集団授業というものですが、それと並行し、マンツーマン指導という形の個別指導も実施しています。 学習のサポート等のキャリア相談も行っています。
尼崎市の現状、そして課題とは?
藤井 少し話は変わりますが、尼崎市での現状の課題、それに対するお考えをお聞かせ頂けないでしょうか。
西様 不登校生の問題という切り口から考えますと、現状の尼崎市は、1100名の不登校生が市内にいるということです。 この数字は、1年前から考えると、約300名は増えてしまっています。 社会的には少子化という流れがあるにも関わらず、不登校生が増えてしまっているというのは、現状としては由々しき事態であります。
我々、現場のスタッフからの目線で考えると、多様性の社会となっている現状にあって、 学校という枠だけで対応するのが難しいということも原因であるのかなとも考えています。
そこで、色々な子どもたちがいる現状、色々な居場所があってもいい、その中で我々のようなフリースクールへの需要もあるのかなとも考えています。 尼崎市という地域で考えてみると、経済格差が大きく出てしまっている側面もあります。
生活保護受給世帯や単身世帯が増えている状況で、その子どもたちへのサポート体制というのは、まだまだ脆弱であるとも考えております。
補助金とか助成金などの経済的な部分はフリースクールには全くないので、月謝を満額で頂かないといけないことになります。 そのため通いたいけど通えない、お金を出せないという状況になってしまうので、不登校の子たちが本当は救える存在、 私たちのような居場所であれば彼らは生活できるのに、お金の問題で救えないという事例が多い。 これから不登校の子たちにどういう風に援助していくのかというのが課題ではないかと感じております。
藤井
具体的には昨年より約300名の不登校児童が増えている現状ですが、今後西さんの見解ではどのようになると考えられてますか?
西様 行政の方もとても努力して頂いており、学校の先生のお話しを聞いていたりし ていても、まだ増えていくと思います。 なぜなら、インクルーシブ教育とかアクティブラーニングとか、いろんな人がいて、 みんなで一緒に頑張ろうという風潮があるのはあるが、まだまだ、上の段階、現場にはおりてきていない。
「ちょっとみんなと違う、普通じゃないな」といった感覚を子供たちが持ってしまいがち。 みんなと違う子たちがはじかれてしまう、そういうことが考えうる世の中なのかと思う。 コロナがようやく明けかけていますが、経済的にはまだ安定してるとはいいがたい状況で、それらの影響を受ける方々が尼崎には多くおられます。 飲食店とかも多いので。そのような家庭の子供の心の不安定さが生まれてしまうのではないでしょうか?
子供は親の鏡だと思います。親の不安は子供にも映ってしまう。 親御さんが自身をもって子育てをする、堂々とすることがお子さんにもいい影響が出ると思う。 ひとつ言いたいこととして、子育てを楽しんで、子供に対しても堂々とキラキラした様子で子育てをすることを心がけてほしいなと思います。
藤井
尼崎にフリースクールは何校あるのでしょうか?
西様
私たちみたいに出席カウントができるフリースクールは市内では3校です。 ただ、フリースクールによって色々運営母体や状況があるので、点々といろんな場所にありますが、 文部科学省が示している出席カウントができるという条件に当てはまっているのは尼崎市内では3校です。
藤井
その3校で先程仰っていた課題に対するアクションや、3校で協力し行っていることはありますか?
西様
立花にぐれいぷハウスさんというところがあるが、代表の赤井さんがとても温かい人柄で、それに惹かれ、よく話を聞きに行って相談を受けて頂いています。 フリースクール自体の色というか、雰囲気がすごく違うので、フリースクール同士の交流ができたら面白いねというのはあるが、 まだ構想段階で実行には至っていないですね。
西さんの想い
藤井
西さんの想いをこのあまっコミュニティを通じ多くの方に見て頂き、知ってもらい、構想の実現に微力ながらお役立てできたらと思います。
西様
私の個人的な考えですが、不登校になってしまったことは大きなつまずきというや悩みの種になりがちだと思います。 私たちからすると、不登校になったくらいで悩む必要はないと思っています。 学校に通っていないという事実は事実ですが、ゆめスクールのような居場所、色んなやり方があるので、 それを知ってもらえるような発信をあまっコミュニティを通じて行って頂けたらと思います。
またフリースクール、生涯学習プラザにもユーススペースなどの青年、若い子たちの居場所というところがあるので、 そういうところを広めることができるイベントであったりとかが一緒にできたりするとすごく面白いと思います。
そして子育てをしている親御さまは実際に不登校という場面に立ち会ったことがない方が多いと思うので、 不登校という場面に立ち会う前に知って頂けるような機会を作って頂けたらと思っています。 不登校という場面に立ち会った時点で、頭が重たくなるというかパニックになったり苦しくなってしまうので、 そういう時に色んなことを考えるのは親御さまもすごく負担なんですよね。 子供たちも焦ってるし、親御さまのプレッシャーとかを感じて子供たちも子供たちらしくいられなくなってしまうので、 大事なのは、そうなる前に知って頂くこと。 学校に通えなくなったらそういう居場所があるんだな、とか色んなやり方があるんだな、と知っていただけることが 子育てをしていく上で支えになるのかなと思いますので、色んな方を対象に子育てをされている、 例えば未就学児、幼稚園、小学生、という色んな段階の親御さまにうちみたいなところを知って頂けるイベントとかを一緒にして頂けるといいかなと思います。
藤井
僕も持ち帰り、そういうことができないか策定しますし、 微力今後同じようにインタビューをさせて頂く方で合致する部分があればご紹介したりできればと思います。
岡
私からも1つ質問させて下さい。 生徒様で障害を抱えている方もいらっしゃるんですか?
西様
発達障害を持った子もうちは在籍しています。 基本的に自分でトイレや食事ができるなど生活ができる子であれば、私たちは発達障害の子と見ていないので、 その子のちょっとした特性アイデンティティとしてみている。 学校さんでは色々考え方もあると思うが、ここに来る子はみんな一緒。 何かが違うからどうこうということはないので、うちに来てうちにいたいと思うならば、できる限りの援助支援をしますので頑張って一緒に来ようね、と。 不登校とかじゃなくても一緒に学校に来て楽しく社会性を身に付けたりとか、お友達と過ごすなど、そういうことを学んでほしいなと思います。
藤井
僕も入学もしくは進学して環境が変わった時はとても緊張し、溶け込むのに少し時間がかかるタイプでした。 入学されてきた子に対するアプローチというか、どんなふうに引き寄せる、輪に入れるというか、やり方はあるんですか?
西様
最初は個別相談の形を取ります。親御さまとヒアリングする中で色々擦り合わせたりします。 ただフリースクールってちょっと面白いのは、生徒たちが雰囲気を作るんですよね。 学校さんは理念があって、こういう風にしていこうというのがすごく強く出るので、制服があったり校則があったりというところがあるんですけど、 うちは基本的に制服も校則もないので、生徒たちの元気な様子とかそういうのが全体の雰囲気に広がっているので、 その子が集団を望まない子であったりとか人と喋るのが苦手という子であったら、 生徒たちに事前に「今日の子は人と喋るのが苦手」とか声かけをするんですが、そうでなければ生徒たちが輪に引き込んでくれるんですよね。 もちろんそれを見てるだけでなく、私たちも仲介とし、スタッフが新入生と在校生をつなぐ役になって、 彼ら彼女たちが自分らしく入れる居場所を生徒たちと一緒に作っていくことを心がけています。 最初は在校生と新入生の間を縮める、溝を埋める、最初の段階を一緒に紡いでいくっていう役割をスタッフは行っています。
藤井
修学旅行や課外活動はあるんでしょうか?
西様
基本的に月一回以上、例えば夏場であればスパワールド、秋には紅葉を見に行ったり、冬はアイススケート、卒業旅行はUSJに行ったりしてます。 私たちがしたいというより、どこに行きたい?みんなと何をしたい?など生徒へのヒヤリングを通して、 生徒たちの想いを形にしてくのが私たちの仕事です。そういうことを心がけて課外活動をするようにしてます。
藤井
とても生徒に寄り添った方針で、生徒の方も日々とても楽しく過ごせていると思います!
子育ての悩みが地域レベルで解決できるようなまちになってほしい
藤井
最後になりますが、西さんの夢、今後の構想をお聞かせ頂けますか。
西様
一般社団法人YUMEとして、まだまだ引きこもってるたくさんの子供たちが「YUME」に来れるように、ここに来たいと思えるような場所を作り続けていく。 個人として、尼崎から不登校という言葉が消えたらいいなと思っています。不登校という言葉がすごく嫌いです。 大人が張ったレッテル。彼らはそれを背負って生きています。
でも学校に行けなくても「YUME」に通えてる子供たちは不登校ではないんです。 そういった切り口、不登校に対する切り口を変えて見れる大人が増えれば不登校という言葉は次第に消えていくのかなと思っています。
かつ、尼崎の中で、「子育てを地域でしたい」という話がよく出ます。 最近のご家庭は親だけが子育てをするような風潮になっていますが、もっと地域レベルで子育てできるようになれば、 子供たちも生きやすい世の中になるのではと考えています。 不登校という切り口だけでなく、「発達」とか、子育てしていく中での悩みが色々あると思うんですが、 それらに地域レベルで解決できるような街になっていけばいい。 そういう街づくりに協力、尽力できればと思っています。
藤井
非常に熱い思いを語って頂き、有難うございました。 このインタビュー活動を始めて西さんが4人目ですが、これまでインタビューさせていただいた方々も地域レベルでそうなってほしいと仰ってました。 個人レベルでは限界もありますし、「まち全体での子育て」というのを根付かせたいと。 微力ではございますが我々もこのサイトを通じて思いを発信、伝えていければと思っています。
藤井・岡
本日は有難うございました!
西様
有難うございました。
(左)広報委員会 岡委員 (右)一般社団法人YUME 西様
【一般社団法人YUME】
【フリースクールYUME School尼崎校】
https://yumeschool-amagasaki.website/